肩こり・首

寝違えから2日、急性頸部外傷にどう向き合うか——スクリーニングと段階的アプローチ


症例の概要

40代男性、デスクワーカー。2日前に寝違えをしてしまったとのことで来院されました。

症状は右の首〜肩上部にかけて。頸椎C5〜C6レベル、正中線から2横指ほど右側に自覚があります。誘発動作は右回旋。仕事中に右側の席の方から話しかけられて振り向こうとすると痛くて困る、という状態が続いているとのことでした。


まず何を考えるか——スクリーニングの重要性

急性の頸部外傷の症例で、私が最初に意識するのはスクリーニングです。

しびれはあるか。神経根症状が出ているか。頸椎椎間板ヘルニア、関節性頸椎症の可能性はどうか。今の症状を生んでいるものは何なのか。この絞り込みこそが最初の仕事です。

今回は上肢のしびれなし、神経根症状も見られませんでした。この確認ができれば、急性外傷として積極的に介入できる判断が立ちます。逆に言えば、ここを飛ばして施術に入ることは私にはできません。見立てのない処置は、患者さんにとっても自分にとってもリスクになると考えています。


問診で見えてきたもの

スクリーニングと並行して、問診を丁寧に行いました。

すると、2日前の寝違え以来、腰にも症状が出ていることが判明しました。立って電車に乗っているとだんだん腰が痛くなる。座位で脊柱を伸展させると、上肢症状が見られました。

患者さん自身は首のことで頭がいっぱいで、腰の症状は「別の話」として持ち込んでいませんでした。こういったケースはよくあります。首の痛みに意識が集中している患者さんに、「他に気になるところはありますか」と一言添えるだけで、全体像が変わることがある。


評価——脊柱全体を診る

脊柱傾聴を行うと、大きな所見は見られませんでした。PSISのスクリーニングテストに関しては、陰性。ただし、左PSISの圧痛時に痛みが誘発されるという所見が見られました。

胸椎の回旋は非常に良好で問題なし。この所見から、肩甲上腕関節の生理的条件が関与しているのではないかという仮説です。

補足:橈骨神経支配の筋肉(主なもの)
腕橈骨筋・長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・総指伸筋・回外筋・尺側手根伸筋


前腕から頸椎を見る

デスクワーカーの頸椎症状で、私がよく確認するのが前腕の伸筋群です。

橈骨神経支配の筋肉——腕橈骨筋や外側上顆周辺、曲池・手三里のあたり。ここに慢性的な緊張があると、筋膜ライン上でそのまま頸椎の動きの妨げになるケースをよく目にします。

今回も肘関節の屈曲で抵抗感が出ており、触診でも伸筋群の筋緊張が確認できました。また、サードポジションでの肩外旋チェックでもやや硬さが見られ、肩の偏向感もある。

この時点で、前腕〜肩甲帯へのアプローチを軸に据える方針が固まりました。


施術——阿是穴と段階的アプローチ

うつ伏せで肩甲骨周辺を触診すると、肩甲下筋・小円筋・棘下筋の周辺に硬結が見られました。

そしてもう一つ。三角筋後部、三頭筋、広背筋の交差するあたり——私が「阿是穴(あぜけつ)」と呼んでいる部位にも反応が出ていました。肩甲骨の内転制限や肩外旋の可動域制限がある場合に、ここによく反応が出ます。経験上、頸椎の回旋制限との相関が高い特効穴です。

ここに刺針し、パルスを10分流しました。

その後、一度座位に戻してもらい、最初に訴えていた右回旋を確認しました。約5割の軽減が出ていました。

「もう一歩取れる」という感触がありました。5割取れたということは、残りの5割にはまだアプローチできる余地があるということです。

追加の触診で、三角筋後部の縁の硬さと、上腕骨結節部(肩甲下筋・棘下筋の付着部)にまだ硬結が残っているのを確認。右側臥位に体位を変えて、そこにも刺針しパルスを流しました。

最終的には7〜8割の軽減を確認して終了しました。


この症例で伝えたいこと

急性期だから無理をしない、という考え方もあります。ただ私の経験では、きちんとした見立てを立てて何が問題かを整理できていれば、急性期でも5〜7割の改善を出すことは十分に狙えます。

今回は受傷2日目、炎症期間内の施術でしたが、7〜8割取ることができました。

大事なのは「やれることをやる」ではなく、「何をやるべきかを先に決めてから動く」ことだと思っています。スクリーニング→問診→全身評価→局所評価→中間評価→追加処置、この流れに沿って進めることで、急性期でも手が止まらずに済みます。


おわりに

デスクワーカーの急性頸部外傷は、患部だけを見ていると解決しないことが多い。前腕伸筋群の緊張、肩甲帯の防御性収縮、そして今回のように腰椎への波及——こうした広がりを初診の問診と評価で拾えるかどうかが、施術の質を大きく左右すると感じています。

皆さんは急性頸部外傷の初診で、どこから評価を始めていますか。

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