施術家の思考

狭窄症の手術歴があっても、検査は一から始める

70代の女性患者さんのケースを共有します。

主訴は左下肢の痺れと、足首から先のボテッとした膨れるような感覚。歩くほど気になる、というものでした。

背景として、2022年に腰部脊柱管狭窄症の手術を受けておられます。術後のMRI所見では問題は見当たらず、手術は成功との評価でした。

このような患者さんを前にしたとき、「手術歴があるから痺れが残っているのは仕方ない」という見立てに、どこかで引っ張られていないでしょうか。私自身、その引力を意識することがあります。

実際に体を診ると、側弯が見られました。右凸の状態です。側弯がある場合、凸の対側——この方では左側——の腸腰筋や腰方形筋に対して、持続的な負荷がかかりやすい傾向があります。

ただ、今回最も気になったのは梨状筋のテストでした。再現性のある強い痺れが出現しました。腰方形筋や大腰筋のスパズムよりも、梨状筋への介入を優先するべきだと判断した理由はここにあります。

坐骨神経痛を訴える患者さんに対して、私たちはどうしても「脊柱からの神経根圧迫」という図式を先に描いてしまいがちです。ただ、足首から先に限局した痺れがある場合、末梢での圧迫が主な関与因子になっているケースも少なくないとされています。梨状筋はその代表的な関与部位のひとつです。

初回の施術では梨状筋を中心にアプローチしました。今回は2回目の来院でした。痛みは大きく軽減し、痺れも薄れてきているとのこと。まだ完全ではありませんが、方向性は見えてきた印象です。

このケースで改めて感じたのは、「手術歴」や「MRI所見」が先にあると、そこに思考が引っ張られるということです。診断名や既往歴を「前提」として受け取ってしまうと、目の前の患者さんの体を白紙で見ることが難しくなります。

検査をする。仮説を立てて施術する。そして再評価する。この流れを崩さないことが、既往歴のある患者さんほど重要になるのかもしれません。

狭窄症の手術をしていても、梨状筋症候群が共存している可能性はあります。側弯があれば、そこからの二次的な筋緊張も関与しているかもしれません。どこかひとつに「答え」を求めるより、丁寧に可能性を整理していく姿勢が求められると感じます。

皆さんは、手術歴や画像所見のある患者さんに対して、どのように初期評価の「白紙感」を保っていますか。既往歴を参照しながらも、そこに縛られない見立ての視点を、どう意識されているでしょうか。

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