71歳の女性の患者さんが来院されました。主訴は「胃液が上がってきてすごく困る」というもので、内科で逆流性食道炎と診断されていました。胃薬の処方を受けていましたが、症状の改善が思わしくなく、当院への受診となりました。
来院時の状態を詳しく聞くと、気持ち悪さで食事がほとんど摂れず、体重がベスト時より6kg減少していました。この体重減少は、単に食欲不振というだけでなく、身体の機能そのものに何らかの制限が生じている可能性を示唆していると感じました。
身体所見で特に注目したのは、胸椎下部から腰椎上部にかけての関節の可動制限でした。T11、T12、L1、L2レベルの脊椎関節にブロックがあり、これらの部位は横隔膜脚の付着部位でもあります。逆流性食道炎の病態を考える際、横隔膜の機能は重要な要素の一つです。
施術は鍼灸を使わず、徒手療法のみで行いました。横隔膜脚の付着部である脊椎関節の可動制限に対して、丁寧にアプローチを続けました。横隔膜の滑走性や本来の動きを取り戻すことを目的として、複数回の施術を重ねています。
約4か月の経過で、患者さんの状態は大きく変化しました。食事が摂れるようになり、減少していた6kgは元に戻りました。それどころか、「食事がこんなに美味しかったんですね」と話されるほど食欲が回復し、現在は2~3kgの体重増加を認めています。
施術を通じて感じたのは、症状の背景にある身体の連関性の複雑さです。逆流性食道炎という診断名がついていても、その原因や改善への道筋は必ずしも一つではありません。今回は横隔膜の機能に着目しましたが、これが唯一の正解だったのかは分かりません。
興味深いのは、改善の過程で新たな課題も生まれることです。今度は食べすぎによる体重増加への配慮が必要になりました。身体の変化に伴って、患者さんの生活も動的に変わっていく様子を見ていると、私たちの役割も常に変化し続けるものなのかもしれません。
同じような症状を持つ患者さんに向き合うとき、皆さんはどのような視点を大切にされているでしょうか。






