40代の患者さんが、右背部の痛みを主訴に来院されました。
問診を進めていくと、油物が苦手で消化に時間がかかるとのこと。健康診断のエコーで「胆石がうっすら映っている」と言われたことがある、という話も出てきました。
神経分節の観点から見ると、症状の分布は胆嚢のエリアと重なります。右肩甲骨の内側から背部にかけての不快感は、内臓由来の関連痛として考えられるパターンのひとつです。
このケースでは、まず「どこまでが自分たちの関与できる範囲か」を整理することから始めました。
胆石そのものは、病理的な問題です。施術でその存在をどうにかすることはできません。ただ、胆嚢周囲の緊張や、内臓と脊椎・横隔膜との連動性に対してアプローチすることは、機能的な観点から意味があると考えています。
それと同時に、食事の話もしました。
脂質の摂り方について、患者さん自身が意識できているかどうかを確認すると、「病院では胆石があると言われたけど、特に何も指導はなかった」とおっしゃっていました。
これは、臨床でよく出会う場面です。
医師が病理的な所見を伝えることと、患者さんが日常生活の中でそれを意識できるようになることの間には、大きな距離があります。その距離を埋める関わりは、施術家にもできることのひとつではないかと、私は考えています。
ただ、ここで立ち止まって考えてしまうことがあります。
私たちが「できること」と「すべきこと」は、必ずしも同じではないかもしれない。食事指導、生活習慣への関与、内臓機能へのアプローチ。どこまでが自分たちの領域で、どこからは他の専門家に委ねるべきか。
生理的な機能の問題であれば、徒手療法が貢献できる余地は大きいと思います。でも病理的な段階に入っているなら、優先されるべきは医師や他の医療専門職との連携です。
右背部なら胆嚢・肝臓。左背部なら胃や膵臓。上半身の痛みひとつをとっても、内臓由来の可能性は複数あります。心臓由来の放散痛がそこに紛れていることもある。
私自身、日々の臨床でその線引きを意識し続けています。「これは自分が関与していい問題か」という問いを持ち続けることは、患者さんを守ることにつながると感じているからです。
あなたは、施術の中で「自分の領域の外」を感じた瞬間、どう判断していますか。
そのとき、誰かと連携できる関係を、すでに持っていますか。





