施術家の思考

膝の訴えの奥に、何が隠れているか

50代の男性患者さんが久しぶりにいらっしゃいました。
前回から5年ほど空いていたでしょうか。

主訴は左膝の痛みでした。
お子さんとサッカーをしている最中に、膝がガクッと抜けるような感覚があり、それから気になっているとのこと。

まず整形外科的な検査を一通り入れていきました。
ですが、特に大きな問題は見当たりません。

この方の左膝には、学生時代にオスグット病を患った既往があります。
動きの可動域自体はほとんど問題ないのですが、屈伸をするときに「詰まるような嫌な感じ」がするというのが、ご本人にとって一番気になる感覚のようでした。

お体全体を診ていくと、左下肢全体に張りがあります。
そして、より気になったのは左の腰でした。
腰まわりに、かなりはっきりとした緊張感があります。

ここで、ご本人からこんな言葉が出てきました。
「普段、腰が痛くなることはあまりないんですけど、今回は腰まで来てしまって。だから久しぶりに来たんです。」

この言葉は、私の見立てと重なる部分がありました。

膝の訴えで来られていますが、今この方の体で一番介入が必要なのは腰ではないか。
左の腸腰筋は明らかにタイトになっていました。
それだけでなく、左の腎臓まわりの筋膜の滑走性も落ちている印象がありました。

施術はまず腰まわりを中心に進めました。
腸腰筋へのアプローチ、腎臓周囲の筋膜の滑走改善、そして腰部の調整。
もちろん左膝まわりへの施術も合わせて行いましたが、重点は腰に置きました。

施術後、ご本人に屈伸の動きを確認していただくと、「怖くない感じになった」とおっしゃっていました。
腰も軽くなったと喜んでいただけました。

この症例で改めて考えさせられたことがあります。

患者さんが「膝が痛い」とおっしゃって来院される。
その訴えは本物です。ご本人は確かに膝を感じている。
でも、体の中で一番負荷がかかっているのが膝かどうかは、また別の問いになります。

膝に大きな器質的問題が見当たらないとき、私たちはどこに目を向けるか。
関節の局所だけを見るのか、下肢全体のラインを見るのか、あるいはもっと体幹側に視点を移すのか。

その判断は、検査の数値だけでは出てきません。
体を触れながら、患者さんの言葉を聞きながら、少しずつ仮説を絞っていく作業だと私は思っています。

皆さんは「膝の訴えで来たのに、膝以外に介入した」という経験、どのくらいお持ちでしょうか。
その判断をどんな根拠で行っているか、一度振り返ってみると面白いかもしれません。

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