症例概要
20代女性。整形外科にて疲労性腰痛と診断されており、ピーク時の痛みはNRS10を記録していたが、来院時には1〜2まで改善していた。整形ではコルセット、リハビリ、痛み止めが処方されていた。
患者の背景
デスクワーク中心の生活。先天性の側弯症があり、2度の出産による骨盤のずれも慢性的な腰痛の素地となっていた。運動経験はダンスと筋トレがあり、来院時にはパーソナルトレーニングの開始を検討している段階だった。
本人の自己診断では「普段とは違う筋トレの刺激が、腰の痛みを引き起こした」とのことだった。20代という年齢的なアドバンテージもあって回復力はすでに備わっており、今回の症例で特に重要になったのは「施術を通じて何を得たいのか」を正確に把握するヒアリングだった。
ヒアリングから明らかになった患者の目的
問診と傾聴を通じて、以下の3点が患者の本当の目的として浮かび上がった。
- 痛みを取りきりたい
- 回復傾向の現状を維持して、再発を防ぎたい
- 腰痛対策のために運動を再開する上での、腰への不安感を取り除きたい
単に「腰が痛い」という主訴の背景に、運動再開への不安という動機が潜んでいた。ここを見落とすと、痛みが取れたとしても患者の本当の満足には届かない。この3点を念頭に、検査・説明・施術を組み立てていった。
検査で意識したこと
患者の目的に答えるために、検査以降のプロセスで以下の視点を特に意識して臨んだ。
- 日常における腰痛のタイミングの確認——どの動作・姿勢・時間帯で痛みが出るか
- 痛みを引き起こしている要因の洗い出し——慢性的な素地(側弯・骨盤)と急性的な誘因(筋トレ)の切り分け
- 取り入れる予定の運動に必要な要素の分析——筋トレやパーソナルトレーニングに対応できる体の状態かどうか
- 自覚と他覚のギャップの確認——患者が「自分の体はこういう状態だ」と思っていることと、術者の評価との差を丁寧に共有する
特に4点目は信頼関係を築く上でも重要な要素だ。患者自身が気づいていない体の事実を、押しつけることなく丁寧に伝えられるかどうか——ここが施術の質を大きく左右する。
患者からの口コミ
施術後に届いた口コミを、ご本人の許可を得て掲載する。

「威圧感や押し付けましさが全くなく」「こちらの話にも真摯に向き合ってくださり」という言葉は、ヒアリングと傾聴の結果がそのまま患者の体験として返ってきたものだと受け取っている。また「いい意味で身体オタクな先生」という表現も、日々の研鑽が伝わっていたことを示してくれていると感じた。
施術者としての考察
SNSの普及により、健康に関する情報は一般の方でも容易にアクセスできるようになった。患者の知識レベルは確実に上がっている。
その中で、わざわざ時間とお金を使って施術院に来る——この行為の意味を、術者側は真剣に考え続けなければならないと私は思っている。情報を届けることなら今や誰でもできる。施術院でしか生まれない価値は何か。その問いに誠実に向き合い続けることが、プロとしての日々の研鑽の土台になる。
初診から信頼を得るというのは、技術だけで決まるものではない。患者が何を求めているかを正確に把握し、それに応える検査・説明・施術を組み立てること。その一連の流れが整ってはじめて、患者の「信頼できる先生」という評価につながる。今回の口コミは、そのことをあらためて教えてくれた症例になった。










