ご紹介でいらっしゃった70代の男性患者さんの話をします。
主訴は右側の坐骨神経痛。お尻から膝裏にかけての痛みと痺れで、特に座位で症状が出やすいとのことでした。一方で歩行は比較的問題なく、1時間ほど歩き続けることもできるとおっしゃっていました。
以前から整体や鍼灸に通っていたそうですが、共通していたのが「施術直後は楽になるけれど、翌日には元に戻る」という感想でした。
この「戻り」という現象、皆さんも日常的に向き合っているテーマだと思います。私はこの言葉を聞いたとき、「施術の中に何かが足りていない」という前提で身体を診るようにしています。
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まず気になったのは、症状が「右側だけ」に出ている点です。
左右差がある場合、どちらかの構造的・機能的な偏りが関与している可能性を考えます。仙骨の動きを評価すると、機能障害の印象がありました。ただ、そこで止まらずに「なぜ仙骨にそのような状態が起きているのか」を辿っていきました。
問診票と腹診を組み合わせていくと、右の腎臓周囲の筋膜、そして肝臓周辺に強いテンションが感じられました。
生活習慣の欄に目を向けると、毎日ウーロンハイを4杯ほど飲まれるとの記載がありました。腹診で肝臓に手を当てると、かなり強く引かれる感覚がありました。
内臓への徒手アプローチは、この患者さんには必要な選択だと判断しました。ただ同時に感じたのは、施術だけではいずれ限界があるだろうということです。
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休肝日のお話を、どう伝えるか。
これは知識の問題ではなく、関係性の問題だと私は思っています。「肝臓に負担がかかっているので禁酒してください」と伝えるだけでは、長年続けてきた習慣はなかなか変わりません。
今回は、まず患者さんが「良くなりたい」と思っていることに共感を示しながら、「だからこそ一緒にこうしていきましょう」という形でお伝えしました。押しつけにならないよう、言葉を選びながら。
患者さんが納得して取り組んでくれるかどうかは、伝える内容よりも伝え方と関係性に左右されることが多いと感じています。
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施術の「持ち」が変わると、患者さんとの関係性も変わります。
翌日に元に戻る状態が続くと、患者さんはこちらの提案を信じにくくなります。逆に、良い状態が少し長く続くようになると、セルフケアの話も受け取ってもらいやすくなります。
施術に依存させることが目的ではない。でも、施術の効果が積み重なっていかなければ、患者さん自身も変化を信じられない。
その両方を成立させるために、生活指導をどのタイミングで、どんな言葉で届けるか。私はまだ試行錯誤しています。
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皆さんは「戻り」が続いている患者さんに対して、どこから原因を探っていますか。そして、生活習慣に踏み込むとき、どんな言葉を選んでいますか。





