施術家の思考

鍼灸師の紹介状では届かない場所がある

産後ケアで来院されている方のことを、今回は記録として残しておきたいと思います。

第1子出産時に会陰の4度裂傷を負われた患者さんです。肛門括約筋の損傷により、出産後から便漏れが続いています。第2子出産後に当院へお越しになり、産後ケア全般をサポートしながら、骨盤底筋へのアプローチも並行して続けてきました。

施術を重ねるなかで、変化はあります。ただ、私の所見として感じているのは「これは施術単独で完結すべき状態ではない」ということです。便漏れの頻度や性状、生活上の支障の大きさを伺うたびに、より専門的な評価と、必要であれば専門的な介入が必要だという印象が強まっていきました。

そこで連携を考えました。近隣の大学病院に骨盤底筋の専門センターがあると知り、患者さんにも同意をいただいたうえで動き始めました。

ここで壁にぶつかりました。

まず、以前に出産されたクリニックへ患者さん自身が紹介状の再発行を相談されたところ、「診断書は出せるが、紹介状は出せない」という回答でした。そして専門センター側は、医師からの紹介状がなければ受け付けられない仕組みになっています。私が鍼灸師として紹介書を書くことは制度上できます。しかしそれでは繋がらない。

これは誰かが悪いという話ではないと思っています。医療機関には医療機関の運用ルールがあり、紹介状の発行にも診察の継続性や責任の所在という背景があります。制度として、そうなっている。ただ、患者さんは現実として手詰まりになっている。

私が取った次の手は、知り合いの医師にオンライン診療で患者さんを診ていただき、そこから専門センターへの紹介状を書いてもらえないか打診することでした。現在、その調整を進めているところです。

今回この経緯を書き留めたのは、一つの問いを持ち続けているからです。

私たちは施術の中で「この方には専門的な連携が必要だ」と感じる瞬間があります。その感度は、経験を重ねるほど鋭くなっていきます。しかし、感じたとしても、実際に繋ぐルートがなければその判断は活きない。

「どこに繋ぐか」ではなく「どうすれば繋げるか」。開業して実感するのは、この動線を持っておくことが、患者さんへの責任を果たすうえで思った以上に重要だということです。

あなたの施術所では、医師との連携ルートはどのように確保していますか。また、鍼灸師の守備範囲と、医療機関へ繋ぐべき判断の境界線を、どのように言語化しているでしょうか。

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