右肩の肩こりを訴える患者さんが来院したとき、あなたはどこから問診を始めますか。
「いつから」「どんな動きで痛むか」。おそらく多くの施術家が、そこから入るはずです。私もそうでした。
ただ、ある時から少しだけ問診の角度を変えるようになりました。お酒はよく飲みますか。甘いものは好きですか。最近、食事の量が増えていませんか。
右肩の慢性的なこりに、肝臓や胆嚢の機能障害が関与しているケースがあります。関連痛のパターンとして、右肩から右腕は肝胆系と関わりが深い。左肩なら胃や食道、左側の坐骨神経痛ならS状結腸、右下腹なら盲腸・回盲弁周辺。こうした地図を頭に入れておくだけで、問診の入口がまったく変わります。
もちろん、これは内科疾患を診ようとしているわけではありません。器質的な病変ではなく、機能障害の領域が私たちの主戦場です。そこに徒手療法や鍼灸が入る余地があります。
正直に言うと、私は内臓の触り方を学校の授業で習ったことがありません。どれくらい押せばいいかも分からなかった。強く押しすぎたらどうなるのか、という怖さもありました。
それでも「これを避けていると、神経系の施術しかできない施術家になる」という感覚がありました。神経術が合わない患者さんに対して、何もできない。それは施術家として大きな穴だと感じました。
内臓を「直接触る」という認識ではありません。皮膚・筋膜・ファシアを介して、内臓という構造物に対して間接的に評価するという発想です。横隔膜の動き、頭蓋と仙骨のリズム、前頸部の状態。これらを丁寧に見ていくと、筋骨格だけを追っていたときには見えなかった情報が浮かび上がってきます。
バイオタイポロジーの視点からも、このことは見えやすくなります。
細長無力(ホソナガむりょく)のタイプは神経が過敏で消耗しやすく、「食べない」という選択ができてしまう人たちです。坐骨神経痛で来院しても、活動量の低さや栄養不足が背景にあることがある。短躯強壮(たんくきょうそう)のタイプは内臓が強い分、使いすぎる傾向があります。お酒や脂っこいものが好きで、肝胆・胃食道への負担が蓄積する。短躯無力(たんくむりょく)は消化器系の弱さから気力も落ちやすく、東洋医学でいう気虚に近い状態になりやすい。
筋骨格だけで戦うと、4タイプのうち3タイプを取りこぼす可能性があります。そして定期的に通ってくださる患者さんの多くは、無力タイプの方々です。本当に体調が悪く、助けを必要としている層と言えます。
内臓や自律神経は「習っていないからやらない」ではなく、「習ったことがないから、これから習得していく」領域だと私は思っています。最初から知っている人なんて、いません。
あなたの臨床の中で、筋骨格の施術をしっかり行っても変化が出にくかった患者さんを思い浮かべてみてください。その背景に、内臓や自律神経の関与を考えたことはありましたか。もしあったとしたら、そのとき何が見立ての手がかりになりましたか。









