施術家の思考

目の奥の痛みを、首だけで診ていないか

30代男性の方が来院されました。

ご本人の主訴は「目の奥が痛い」こと。症状が強くなると吐き気まで出るといいます。眼科を受診し、検査を受けた。異常なし。目薬を処方されたが改善しない。市販の栄養剤も試した。それでも痛みはぶり返してくる。

SNSで「目の奥の痛みはストレートネックが原因かもしれない」という情報を目にして、来院されました。

お仕事は建築現場の管理職。重い資材を扱うわけではありませんが、現場を監督する立場として、緊張や責任のかかる時間は長いはずです。

拝見すると、確かに頸椎はストレートな状態でした。ただ、私がまず注目したのは頸椎そのものではありませんでした。

ストレートネックは、多くの場合「結果」です。胸椎の後弯が強くなることで、バランスを取るように頸椎がまっすぐになる。そういったパターンが多い。だとすれば、頸椎に直接アプローチするよりも先に、胸椎の状態を丁寧に確認する必要があります。

この方の場合、胸椎に複数の機能障害が認められました。そして胸椎には肋骨が付随しています。そちらも確認すると、左側の肋骨にも障害が見つかりました。

本日の施術は、胸椎と肋骨へのアプローチを中心に行いました。セルフケアとしてのストレッチ指導も合わせて実施しています。

ただ、今回の施術で私が最も時間をかけたのは、説明でした。

解剖学的に、胸椎の肋骨角のすぐ前には交感神経幹が走っています。目の奥の痛みや吐き気まで症状が出ているとすれば、自律神経への影響も視野に入れて考える必要があります。

睡眠の質、食事の乱れ、動悸や息切れの有無。丁寧に聞いていくと、ご本人が「そういえば…」と思い当たることが次々と出てきました。自覚のなかった「おかしな点」が、言語化されていく瞬間です。

患者さんが「なぜ自分の体にこれが起きているのか」を理解できたとき、表情が変わります。それは施術台の上だけでは起きないことです。

機能障害のみであれば、施術の難易度は高くありません。ただ、「難しくないから大丈夫」とは伝えませんでした。侮らずにセルフケアを続けてほしい。そのためにも、今の状態と今後のリスクをきちんとお伝えすることが必要だと感じました。3週間後に再度確認する予定です。

主訴の部位だけを診ていると、見えないものがある。頭ではわかっていても、改めて感じた一例でした。

みなさんは、患者さんが「ここが痛い」と言ったとき、最初にどこを診ますか。その順序に、自分なりの根拠を持てているでしょうか。

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