内臓調整

左背部痛と自律神経症状、どこから読み解くか

40代の女性の方でした。

首肩こりが長く続き、5年前から左の背中に痛みが出始めた。胸腰移行部の左側に明確な硬さがあり、本人もそれを自覚されていました。

そこに半年前から、症状が重なっていきます。胃の不調、めまい、耳鳴り、そして気分の落ち込み。体重もこの半年で5kg増えていた。「もう付き合っていくしかないんですかね」という言葉が、問診の中で出てきました。

腹部の触診をすると、太陽神経叢のあたりにかなりの硬さがありました。本人が「ちょっときついですね」と言葉にするくらいの反応です。

左の背中の痛みを細かく追っていくと、左横隔膜脚の状態が良くない。横隔膜そのものへのアプローチも必要だと感じました。胸腰移行部(Th12〜L1)には機能障害もあり、横隔膜に接している胃・肝臓にも調整が必要な状態でした。

ここまで触診で整理できてくると、一つの仮説が立ちやすくなります。内臓と自律神経と筋骨格、それぞれが独立しているのではなく、互いに影響し合っているのではないか、という見立てです。

太陽神経叢に強い反応が出る方には、心理的・精神的なストレスが関わっているケースが少なくありません。そこで「最近、何かストレスになるようなことはありましたか」と、自然な流れで聞かせてもらいました。

やはり半年前に、強いストレスがかかる出来事があったとのこと。今はそれが落ち着いてきているというお話でした。

であれば、身体へのアプローチと並行して経過を見ていける可能性はある。そう判断して、2週間ごとの施術を提案しました。

この方は来院前に、別の施術院を2件、鍼灸院も受診されていました。「太陽神経叢の話は誰もしてくれなかった」「左の背中が横隔膜脚と関係しているとも言われなかった」とおっしゃっていました。

私がそれを聞いて感じたのは、他院への批判ではありません。むしろ、私自身への問いかけです。

解剖学的な根拠をもとに触診で状態を整理し、それを言葉にして患者さんに伝えること。それは、技術以前の「基本」なのかもしれない。でも、それが十分にできているかどうか、常に自問が必要だとも思います。

患者さんが「何が起きているか、少しわかった」と感じられるだけで、身体の反応は変わることがあります。安心そのものが、一つのアプローチになる場面もある。

自律神経の乱れを主訴に整体を訪れる方は、ここ数年で確実に増えています。そういった方の身体を読むとき、あなたはどこから糸口を探していますか。

症状の数が多いほど、どこに優先順位を置くか迷うこともあるかもしれません。そのときの判断軸を、一度言語化してみると、自分の見立ての輪郭が少し明確になるかもしれない。そんなことを考えた一日でした。

関連記事

  1. 内臓調整

    夏になると崩れる。その「サイクル」をどう読むか

    20代後半の女性。主訴は全身のだるさ、のぼせ、冷え性、食欲不振、乗り…

  2. 内臓調整

    坐骨神経痛様症状に、なぜ小胸筋へ刺針するのか——ASIS機能障害の見つけ方と遠隔アプローチの実際

    症例の概要60代女性。右側の坐骨神経痛様症状を主訴に来院されました…

  3. 施術家の思考

    目の奥の痛みを、首だけで診ていないか

    30代男性の方が来院されました。ご本人の主訴は「目の奥が痛い」こと…

  4. 内臓調整

    横隔膜の可動制限と逆流性食道炎への考察

    71歳の女性の患者さんが来院されました。主訴は「胃液が上がってきてすご…

  5. 内臓調整

    右背部痛の奥に何を見るか

    40代の患者さんが、右背部の痛みを主訴に来院されました。問診を進め…

  1. 施術家の思考

    膝の訴えの奥に、何が隠れているか
  2. スポーツ・外傷

    肉離れから1ヶ月半、なぜ腫れが取れないのか——標治と本治、両面からのアプローチ
  3. スポーツ・外傷

    膝の痛みを訴える患者さんの、本当の問題はどこにあるか
  4. 肩こり・首

    寝違えから2日、急性頸部外傷にどう向き合うか——スクリーニングと段階的アプローチ…
  5. 内臓調整

    右背部痛の奥に何を見るか
PAGE TOP